今回は大谷選手の決め球「スイーパー」を詳しく解説していきます。
WBC決勝でトラウト選手を空振り三振に仕留め、侍ジャパンの世界一を決めたウイニングショットといえば覚えている人も多いかもしれません。
メジャーの選手たちが「来るとわかっていても打てない」と口を揃える強烈なボール。
その曲がり幅の大きさから"魔球"と呼ばれています。
この記事は、そんな大谷選手のスイーパーの威力がいかにすごいのかがわかる内容になっています。
また従来のスライダーとの違いなどもわかりやすく紹介していくので、ぜひ最後まで読んでいってください。
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いまMLBでもっとも熱い球種スイーパー
スイーパーはスライダーの一種なのですが「フリスビーのようだ」と表現されるように、従来よりさらに横へ鋭く大きく変化していくのが特徴です。
伝説となったWBC決勝で、大谷選手がトラウト選手に最後に投じた一球。
この時は球速140km/h以上、曲がり幅43cm以上とベースをまたいで外角へ逃げる強烈な変化をみせ、トラウト選手のバットが空を切りました。
MLB公式は、スイーパーを
いま球界でもっともホットな球種
と紹介。
いろんな投手がこぞってこの新球種を取り入れているが、新しい波を引っぱっているのは間違いなくショウヘイ・オオタニだ
と、大谷選手をスイーパー使いの第一人者として評しています。
頭ひとつ抜けている大谷選手のスイーパー
旋風を巻き起こし、習得しようとするピッチャーが急増しているスイーパー。
ただ現時点で、MLBの投手でもスイーパーの使い手として名前があがるのはごくわずかに限られます。
ミッチ・ケラー選手(パイレーツ)やマックス・フリード選手(ブレーブス)がその代表格ですが、いずれも球速は130km/hほど。
130キロ台後半のスイーパーをバンバン投げ込む大谷選手は、やはりMLBでも一人抜きん出た存在だといえますね。
大谷選手のスイーパーを打者側から体験
スイーパーがどういうボールなのか、実際に見てみましょう。
WBCの開幕前、大谷選手のInstagramにブルペンでの練習風景がアップされました。
そこでは、バッター目線で大谷選手のスイーパーを体験できるようになっています。
スピードと変化がエグい…!
練習でこのボールなら、試合本番ではいったいどれだけキレが増すのか恐ろしいですね。
スライダーとの違いは?スイーパーを解説
スイーパーの定義
気になるスイーパーですが、従来のスライダーとはどう違うのでしょうか?
スイーパーの定義は諸説あるようですが、MLB評論家のAKI猪瀬さんによると
- 球速が128km/h以上
- 高低差が10cm以内
- 横方向への曲がり幅が25cm以上
と、されているようです。
つまりスライダーの軌道にさらにプラスして…
- スピードが速く
- 地面への落ちが少なく
- 横に大きく曲がるボール
をスイーパーと呼びます。
昨シーズンまでは、このようなボールもすべて「スライダー」として1つにまとめられていました。
大谷選手のために今シーズンから制定
ただ、大谷選手の投げるスライダーは球速・横への変化ともにMLBの平均を大きく上回る驚異的なもので、ほかとは明らかに違っていました。
そこで今シーズンからは伝統的なスライダーとは区別し、新たな球種として「スイーパー」と名づけられたんです。
まさに大谷選手のために、新球種が作られたと言っても過言ではないといえます。
わかっていても打てない一級品の変化とスピード
トラウト選手との対決の時のフォーシーム(ストレート)とスイーパーの投球を重ねた映像があるので、ぜひ比べてみてください。
重ねてみると、それぞれの軌道の違いが思いっきりわかりますよね。
注目なのはこの2種類のボール、投球フォームとリリースポイントがほぼ同じであるということ。(重ねて見せられるとよくわかる)
投球フォームとリリースポイントが同じということは…
大きく曲がるスイーパーが来るのか、160km/hのフォーシームが来るのか、バッターからしたら投げられた後のボールの軌道だけで判断するしかないということです。
これは打てないっす…!
さらに大谷選手のスイーパーは、変化の大きさに加えてスピードまで兼ね備えている優れもの。
WBCでの最後の一球も、トラウト選手が
ウイニングショットはスイーパーで来ると予想していた
と、のちに回顧しています。
トラウト選手のような超一流のメジャーリーガーでさえ「来る」とわかっていても打てない。
大谷選手のスイーパーのすごさを物語っていますよね。
スイーパーで無双した試合をプレイバック
ここでは、大谷選手のスイーパーが冴えわたった試合を1試合ピックアップして紹介します。
2023年シーズン開幕直後から、スイーパーはMLBを席巻していました。
4月5日 マリナーズ戦
ピッチャー大谷として今季2試合目となったこの試合。
6回に3者連続三振を奪うなどスイーパーが光り、8奪三振で今シーズン初勝利を収めています。
印象的だったのが、昨シーズンの新人王フリオ・ロドリゲス選手を三振に仕留めたスイーパー。
このボールには、解説のマーク・デローサさんも
ロドリゲスは「よっしゃ。甘く浮いたスライダーだ」と思ってスイングにいっている。ところが、外角のボールゾーンに達するところまで曲がり「何じゃ、こりゃ!」となって空振りした。
中日スポーツ
と、大谷選手のスイーパーのすごさを評しています。
実に48cmもの横回転をみせたスイーパーに、ファンからも
あの変化の仕方は不公平だろ!
パワプロかよ!
違法にするべきだ!
と、驚きの声があがっていました。
大谷選手のピッチングの核となるスイーパー
大谷選手の球種別の投球割合
大谷選手本人がスイーパーに一番の自信を持っているのがわかるデータを紹介します。
こちら2023年シーズン開幕1ヶ月の球種別の投球割合です。
球種 | 球数 | 割合 |
スイーパー | 251 | 48.1% |
フォーシーム | 128 | 24.5% |
カットボール | 60 | 11.5% |
スプリット | 32 | 6.1% |
シンカー | 28 | 5.4% |
カーブ | 22 | 4.2% |
スライダー | 1 | 0.2% |
なんと投球の約半分をスイーパーが占めていますね。
通常は一番多くなるはずのフォーシーム(ストレート)の、実に倍の球数!
もはや大谷選手のピッチングの軸といっても過言ではないでしょう。
大谷選手といえば160km/hを超える豪速球のイメージが強い人も多いと思いますが、スイーパー主体となったのはどうしてなのでしょうか?
その理由は2つあると言われています。
決め球・見せ球 あらゆる場面で威力を発揮
1つ目の理由はスイーパーの精度が抜群に高く、投球を組み立てやすいということです。
決め球として空振りを取れたり、ほかの決め球を生かすカウント球としても使えたりと自在に操れるのが強みです。
侍ジャパンでともに戦った盟友・吉田正尚選手との初対戦シーンにも、それが現れていました。
スイーパー・スイーパーと2球で追い込み、最後は158km/hのフォーシームで三球三振に打ち取っています。
スイーパーの鋭い軌道のイメージが残るなかでズバッと真っ直ぐが来ると、さすがの吉田選手も対応しきれないといった感じでした。
負担軽減からトップレベルまで引き上げる
2つ目の理由は、肘のケガの影響からです。
メジャー1年目は、スプリットを決め球として多く使っていた大谷選手。
肘のケガで1年目のオフにトミー・ジョン手術を受けてからは、肩や肘への負担が少ないスライダー系に投球のメインを移していったといいます。
その後、動作解析で身体の使い方などの研究を地道に続け、一番の決め球にまで磨きあげていきました。
4月11日のナショナルズ戦では、投じた92球のうちスイーパーは51球で割合はなんと55%!
ピッチャーとして進化し続ける大谷選手にとって、現在もっとも頼りになるボールがスイーパーというのは間違いなさそうですね。
まとめ
大谷選手の決め球「スイーパー」について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
スイーパーの定義は
- 球速が128km/h以上
- 高低差が10cm以内
- 横方向への曲がり幅が25cm以上
スピードが速く、地面への落ちが少なく、横に大きく曲がるスライダーということでした。
そして大谷選手の投球の軸として、フル回転の球種であることも見えてきましたね。
大谷選手のスイーパーは、これからもさらにキレを増してメジャーの強打者たちを圧倒していくことになりそうです。
ピッチャー大谷翔平がスイーパーを操り、今シーズンどんな飛躍を見せてくれるのか、目が離せないですね。
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